スピッツの世界を漂ってみたい君へ『小さな生き物』を

スピッツが好きだ。聴けば一発で分かる歌声、大好きなメロディ、あの愛おしい世界。
キャリアは長く、ファン層が幅広い。第一線で軽やかに活躍し続けるモンスターバンドだ。現在、連続テレビ小説『なつぞら』で、「優しいあの子」という主題歌が流れているが、聴くたび元気になる。

さて、スピッツは結成30周年記念に全シングルを網羅したBOXを出していたり、以前にもベストアルバムを出しているので、音源にはあたりやすいだろう。そのうえ、聴いたことのある曲が沢山だと思う。曲名を知らなくても、聴いたことあるこれ、というような曲が何曲かありそうだ。
そういえば、私は、初対面で音楽が好きという話題になったとき、年齢に関係なく話す入り口は大抵スピッツだ。彼らの曲ならみんな知っているからだ。この「みんな知っている」というのは本当にすごいことだと思う。
しかし、今回はあえて、『小さな生き物』というアルバムの話をしようと思う。私が1、2を争うほど好きな作品だ。この文章は、「RADWIMPSをゆるく追ってきた奴の好きな曲」「ハナレグミに惚れた奴がおすすめをする」と同じようにBUMP、アジカン、フジが好きなやつの好きな曲という視点で紹介していく。

私がスピッツと、ちゃんと出会えたのは、2013年発売のオリジナルアルバム『小さな生き物』だった。ジャケットが楽曲たちの雰囲気を見事に表わした作品だ。可愛らしく豊かでどこか寂しく、ひどく心地よいそんなアルバムだと思う。
なかでも「小さな生き物」「オパビニア」「野生のポルカ」「潮騒ちゃん」は聴き狂った。ちなみにプロデュースに亀田さんがいる。(「音楽をおすすめする話~プロデューサー視点~」)

表題曲「小さな生き物」は、もうまさにスピッツみたいな楽曲だと思う。言葉の選び方、語彙、語順が草野マサムネでしかない。
表題曲は良い曲揃いとは今まで散々書いてきたが(「くるり『ソングライン』と歩きたい道」など)これも例に漏れず、アルバム名となるにふさわしい楽曲だ。明るい曲か暗い曲かと聴かれると明るい曲と言いたいのだが、そう簡単には割り切れない感じもスピッツらしいなと思う。

「オパビニア」は、自分でも何に惹かれた明確にはいえないが、大好きな曲だ。Aメロなどの一定のリズム感、展開の変化、サビへの盛り上がりが聴いていて最高なのだ。しかし、歌詞を見るだけでスピッツだな、と思うこの個性は本当に唯一無二だ。

「野生のポルカ」。ドンピシャで大好きな曲である。もうイントロの愉快さから最高だ。一方で歌詞は一筋縄ではいかない。このバランス感覚が本当にスピッツである。言い回しの独特さも良い。
この曲はライブ定番曲のイメージがある。イントロから飛び跳ねる1曲だ。“飛びまりたい 武蔵野の空を”の部分がご当地歌詞になるのも聴き所である。名古屋は確か“飛びまりたい なごやかな空を”だったと思う。

「潮騒ちゃん」。これも聴いた瞬間から心臓を打ち抜かれた。いつかライブで聴きたいと願い続けている曲である。この曲は可愛いポイントがめちゃんこある。まず曲名に「ちゃん」付けだ。もうこの時点ですごく可愛い。そして歌詞がすこぶる可愛い。突然出てくる博多弁。歌詞から導かれる手拍子。曲調も最強に可愛い。
しかし、“半端にマニアな寒村”なんて言葉の組み合わせ、どうやったら出てくるんだろう。草野マサムネはその語彙をどこで獲得し、自分のなかに落とし込んで歌詞を紡いでいるのだろうか……。

今回は特定の曲を取り上げて書いたが、この『小さな生き物』は、通しで聴くのが楽しい作品だ。まとまりがあって、心が軽やかになる。スピッツの世界に浸りたいときにぴったりな一枚だ。

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【まとめ】スピッツについての記事たち
スピッツについて書いた記事をまとめました。曲の話から「旅の途中」という絶版本、ライブ、物販の話などです。

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