前々回「眠れないときに聴きたいフジファブリック」、前回「食べるときに聴きたいフジファブリック」と書いたので、今回のテーマはこれだ。一緒に散歩したいフジファブリック。あと時間帯によっても違うなと思ったので、日が出ている明るいときに聴きたい曲を紹介することにした。夕方、夜だとまた違ってくる気がする。
以下の曲たちは、きっと散歩の時間を素晴らしく彩ってくれるだろう。
2008年発売アルバム『TEENAGER』
「ペダル」
この曲は、本当に、本当に、一緒に歩くのが楽しくて、切なくて、とてつもない気持ちになる曲なのだ。
そもそも楽曲自体がとても良い。澄んだ空気と広い世界を感じさせてくれる。響きの耳触りが心地が良く、楽器の音、志村くんの歌声が胸の内を優しく吹き抜ける。
一方で、この曲に色んな感情を抱くのはなぜか。一緒に歩くと楽しいのはなぜか。それはテンポにある。以下は「ペダル」について志村くんが語った言葉である。
この曲のBPM、というかバスドラムのテンポですけど、それを僕が普段歩いているときの速さと同じにしてくれって
フジファブリック、 『FAB BOOK』 、角川マガジンズ、 2010、91p.
私は、藤くんの、ゴッチの、総くんの、池ちゃんの、永積くんの、歩く速さを知らない。それなのに、志村くんの速度は知っているのだ。これって本当に、なんというか、すごいことだ。なんていうものを作ってくれたんだ、と思う。ああ、志村くん歩くの早いな、なんて微笑んでしまうその道のりを、私は幸せだと思う。
2010年発売アルバム『MUSIC』
「MUSIC」
四季を歌った曲はいつ聴いても心に響く。どの時期に聴いてもぴったりだ。今まで散々、アルバム表題曲は名曲揃いと書いてきたが(「スピッツの世界を漂ってみたい君へ『小さな生き物』を」とか)、この曲もまたしかりである。そして短い曲は名曲揃いとも書いてきたが(「スピッツの夢にいる『醒めない』」とか)、この曲もまたしかりである。
シンプルなように聴こえて遊び心がいっぱい、声の重なり、音の重なりが気持ちよい1曲だ。歌詞も情景が鮮やかに浮かび、心に四季が訪れる。イントロを聴くと泣きそうな気分になるのは何でだろう。親しみ、愛おしさ、切なさ、ワクワクなどの感情がぽこぽこ湧いて出てくる。外の景色と感情が混ざり合って、歩くのを楽しく感じる1曲だ。
2013年発売アルバム『VOYAGER』
「透明」
散歩をするのに、これほど似合う曲もそうそうない。「オリジナルアルバムで好きな曲とは?~フジファブリック編~」でも書いたように、本当に好きな曲なのだ。それはひとえに、この曲がとても、とっても良い曲だからである。柔らかく、淡く、儚く、涼しげで、愉快で、美しい。歌詞の時間経過とリンクした音の響きと、歌声の心地よさ、メロディの愛おしさ、どれをとっても素敵なのだ。木々の間を通る小道でも、涼しい風の吹く海辺でも、朝日に照れされきらきら光る街中で聴いてもきっと似合う、そんな曲だ。
歩きながらついつい口ずさみたくなるような、どこか気安い佇まいの1曲でもある。
歩くことと音楽を聴くことは親和性が高いと思う。そして、散歩する気持ちには、フジファブリックの叙景的な一面を持つ歌が、心地よく共鳴する。愛おしい景色を見ると曲を思い出し、曲を聴くとかつて目にした景色を思い出す。そういうのが私の宝物になっていくんだよな、と思うのだ。
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