いつかの旅の記録~静岡 熱海編~

キノボリくんは思いついた。たまには、ただの探検に行ってみよう、と。

日々の疲れを癒やすべく熱海へと向かった。というのは嘘で、単にずっと探検してみたかったのだ。新幹線や電車で通る度に、この町を歩き回りたい、とずっと思っていた。山の斜面に建てられた家々、観光地ならではの浮かれたような雰囲気、奥に見える水平線。この町を歩くのはきっと楽しい、と確信していた。

気持ちよく晴れ、冬にしては暖かいある日、熱海に降り立った。そもそも静岡(海岸沿い)は晴れの国、というイメージを持っていたが、熱い海の名に恥じぬ温暖っぷりだった。そして、町をぷらぷらしていて思ったのだが、湯が張り巡らされているのではないか? と少しだけ過った。グレーチングからは白い湯気みたいなのものが立ちのぼっていた。
駅から出て、アーケードのある商店街を歩く。結構人通りが多い。そこかしこで温泉饅頭や魚介類の産物を売っていた。
散策していて思ったが、本当に傾斜や階段が多い。商店街すら坂道に軒を連ねていたのには驚いた。ふと現れる階段にどうも心惹かれる。そして意図せず目に入る海に胸が躍るのだ。道を歩いていると、お地蔵さんと出会うように、所々に源泉が流れていて、触れるようになっていた。これが結構熱いのだ。
海に向かって坂を下り、階段をおり、道を歩く。熱海の町を見下ろすと、MOTHER2というゲームに出てくるサマーズという町のことを思い出す(「この世界と地続きな気がするゲーム『MOTHER2』の話」)。
ビーチに出た。砂浜はさらさらで、波打ち際にいる子供たちがトンネルを作っていた。風もなく波はとても穏やかだった。私に馴染みのある海は、いつも風がけっこう強くて波の音こんなに大きかったっけ? と思うほど大きな音を立てて寄せては返していたので、熱海の海は居心地が良いなあと安らいだ。
クレープみたいなお菓子を食べている若者のそばに海鳥がめちゃくちゃ集まっていて、私の頭のそばを滑空していったのがとても怖かった。なめられている。

目的地もなく散策していると、洋菓子屋の前を通りがかった。妙に気になり、店内に入る。美味しそうなチョコのお菓子を購入し、公共のベンチに座って食べた。これが大当たり、とっても美味しかった。外はパリパリのチョコでコーティングされていて、中は生チョコの食感なのだ。おやつ用の少量パックみたいなのを購入したのだが、食べ終わった後、また店に行き、お土産用を買ってしまうほどだった。
しばらく歩き、お腹が減ってきたので、ご飯屋を探すことにする。駅前から離れた、店が連なる道を歩いていると、ビルの隙間からトビの鳴き声が聞こえた。
特に行きたい飲食店を調べていなかったので、たまにはレビューを確認せず食べてみるかと、ほどほどに行列のある海鮮を扱うお店に並んだ。待っている間、ときおり硫黄の匂いがし、温泉街だなあと思った。そこで食べた海鮮丼は非常に美味しかった。最初にでてきた豆腐のサラダも味噌汁も美味しかった。当たりを引いて嬉しかった。行列には行列ができる理由があるのだ。物販や入場以外で散々並んでいるので、並ぶのは嫌いだがたまにはいいなと思った。
その後もあてもなくぶらぶら歩き、買い食いしたりお土産屋を冷やかして、帰路に着いた。もう少しまわりたかったな、と後ろ髪を引かれつつ、電車に乗る。
熱海の町には光が灯りはじめ、今日もまた日が沈んでいく。

【今日の曲】
金津宏「サマーズのテーマ / プライヴェートな風」『Mother2 ギーグの逆襲』(1994年)

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