以前、大好きな漫画『よつばと!』の話を書いた。今回は、小説の話を書こうと思う。
ここ最近ゆっくり読み続けている物語がある。L・M・モンゴメリ作『赤毛のアン』からはじまる、アンのシリーズだ。私は 村岡花子訳 の新潮文庫から出版されたものを読んでいる。『赤毛のアン』という作品名はきっとどこかで耳にしたことがあるのではないだろうか。実は、あの作品には続編がいくつもあるのだ。そして、その一連の物語を読み進めていくうちに、私はあの世界にずいぶんと引き込まれていった。
『赤毛のアン』は主人公、アンの少女時代を描いた作品だが、巻数を重ねるにつれて、アンは成長していくのだ。その物語を追っていくうちに、私はたくさんのモノをもらったと思う。
この作品で一番印象に残っているのは、実は情景描写なのだ。あんなに美しく心に煌めく風景を見せてくれる文章に出会ったのは、はじめてだった。目の前にある文字を読むだけで、なんて綺麗なんだと心震わされた経験は今まで味わったことがなかった。この気分を思い出すだけで幸せな気持ちになることができる。
原著を読んだことがないので、どのような形でああいう文章が生まれたのか想像はできないが、きっと作品の魅力を最大限日本語にしたから、あれほど素敵な描写が書かれたのではないのか、と想像している。それに加え、語彙力も言葉の組み合わせ方も素晴らしいのだ。
他に印象に残っていることといえば、やはりユニークな言い回しや登場人物たちのやりとりだろう。巻によってアンを取り巻く人間模様が変わっていくのだが、それぞれの年代に共感したり、ハッとさせられたり、ああこういう考え方でこういう行動をするのか、と学んだり、面白かった。
私が一番好きだと思った作品は、第5作『アンの夢の家』なのだが、この作品に出てくるジム船長という人物がとても心に残っている。そもそもこの作品の舞台がフォア・ウィンズという場所なのだが、地名からして良いな、と思った。そして船長はこの港で灯台守をしているのだ。この老人はユーモアを理解し、とてもユニークだ。
アンシリーズのなかで宝箱に取っておきたい言葉はたくさんあった。
また、今との感覚の違いや、その一方で100年以上前の作品なのに同じだ、と感じたことがあったのも面白かった。例えば、第3作『アンの愛情』では、大学の仲良し4人が集まってシェアハウスしようよ! となり、家を探すところなど、なんだかとても羨ましくなったものだ。
今、最終巻である『アンの想い出の日々』の下巻を読んでいる。物語を読み終えてしまうのが寂しくて、なかなか手が伸びない。シリーズものを読むとき、最後はいつもこうだ。でも、ちゃんと彼女の物語を見届けたいと思う。行く末に辿り着いたら、またもう一度、最初から読み返したいなあ、なんて考えている。
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