やる気が尽きたときのお供『フリーター、家を買う。』

家に帰るとヘトヘト、もう何もやる気が起きない。家事もやりたくないし、自分の将来のために時間を使う気力もない。ただただスマホをいじっては、無為に時間が過ぎていく。そんなときに、この本がそばにあるのは救いだろう。
『フリーター、家を買う。』(有川浩、幻冬舎、2009年)は、テレビドラマ化された小説だ。話の出発地点は、主人公が新卒で入った会社を数か月で辞めるところからである。

どんな人におすすめか。今、何もやる気が起きない人、奮起したい人、腰が重い人は特に読んでみてほしい。私も怠惰な気分のとき、あるいはただ面白い話を読みたいな、という気分のときに、よく手に取る作品だ。そして手に取ったが最後、勢いよく貪るように最後まで読んでしまう魅力のある本でもある。

この作品、どの世代にも心に突き刺さる部分があると思う。特に、これから働くことが近い世代、そして働いている人々は、心揺さぶられるものがあると思う。または家族にあたってしまう人、就活で悩んでいる人もハッとさせられる場面が多々あるだろう。

私が本を読みたくなる理由のひとつには、他の人生を覗いてみたい、という欲求がある。この作品はまさに、どこかの誰かの、地に足がついた日常ともいえるだろう。それが作品として成り立っている、そのうえ面白くてしょうがないのだ。これは「笑える」ではなく「興味深い」ほうの面白いである。自堕落で親に甘えて過ごす主人公(プライドはいっちょ前)が、どう変化をしていくかも見ものである。

著者の有川さんは、人を描くのがうまいな、といつも思う。人がどう考え、どう行動するかの描写が違和感ない、とでもいうのだろうか。そして、その登場人物たちが奮起して成し遂げようとする行動に感化される。だから、有川さんの作品を読むとやる気が出てきたり、好奇心が疼いたりするのだ。読みやすいうえに、よい影響をうけやすい、そんな印象のある小説を書いてくれるという認識を、私は有川さんに持っている。

今日の私は、ヘロヘロでやる気の在庫が底を尽きていた。しかし『フリーター、家を買う。』をぱらぱら読んでいるうちに、気力が湧いてきたのだった。

前回の本の話はこちら(「面白い小説「シーソーモンスター」)。

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