前回はアルバムツアーについて書いた。アルバムを冠にして各地を回るという、オーソドックスな形のツアーだ。さて、今回は「引っ提げないツアー」について綴ろうと思う。
この形式は、どの曲をやるか未知数の希望に満ちたツアーなのである。
何回もツアーに行ったりしていると、聴き馴染みのある曲、というのが出てくる。いわゆるセットリスト固定曲というやつだ。これについてはまた書きたいと思っているのだが、このセトリ固定曲、ツアーという枠を超えて存在していると思う。時期にもよるのだが、例えば、BUMPなら「天体観測」「虹を待つ人」などが思い浮かぶ。アジカンなら「リライト」「今を生きて」。フジなら「銀河」「夜明けのBEAT」と言ったところだろうか。それが何回もライブに行ってるとどんどん増えるのである。そういう曲の安定感というか、そのバンドのこれぞ! という姿を拝むと、そうそうコレコレと元気になる。ただ、その一方で、いや、これはこちらの勝手な都合でもあるのだが、やはり、色んな曲を聴きたいと思うのだ。セットリストはバランスが難しいと思う。たったのある一曲を聴けただけで、ああ生まれてきてよかった、と思うこともあれば、内容はそりゃさ、よかったけど、セットリストもうちょい…みたいなこともある。色んな複雑な要因が絡み合ってライブ後そして日常生活のエネルギーになるので、なんとも言えない。
そんななかでも、革新的なツアーこそが「引っ提げないツアー」なのである。アルバム発売後ツアーのセットリストはアルバム曲中心のラインナップになる一方、引っ提げないがゆえに、セットリストの自由度が広がるのだ。もちろん、今までの傾向を見ると、新しめの曲を多くやっている。でも、そういう曲たちは実は新しいオリジナルアルバムに入らなかったりすることもあるのだ。これはあとになって分かることだけれど。
どこで演奏されるか分からないタイミングの曲たちを聴けたのは本当に嬉しかった。BUMPでいうPATHFINDERツアー、フジでいえば三日月ADVENTUREシリーズだ。PATHFINDERツアーのハイライトといえば沢山あるが、なかでもシングル『HAPPY』カップリング曲「pinkie」の初披露だろう。カップリング曲ながら根強い人気があり、ライブの演奏を切望されていた曲でもあった。
三日月ADVENTUREシリーズでは、日替わりで滅多にやらない曲をやるなんていうびっくりセトリも飛び出した。名古屋で聴いた、現体制初披露の「ロマネ」は、忘れることのない記憶となったのだ。
引っ提げないツアーでは、根強い人気があるのに、今までなぜか演奏されなかった曲を聴ける傾向にあると思う。だから、そんなツアーも待っている。
コメント