同じテーマを持った作品を同時期に観たこと 動物たちの物語

ある一時期、色んな縁で、同じテーマの作品を同時期に観たことがあった。もちろん作品に含まれるテーマはひとつではない。ひと要素の話である。その作品とは、漫画『BEASTARS 』、映画『おまえうまそうだな』、映画『あらしのよるに』だ。ご存じの方はピンときたと思うが、私がここで感じたテーマは「捕食者と被捕食者の関係性」である。

ひと作品ごとにザックリ概要を書くと、『BEASTARS 』は学園漫画だ。動物たちがその動物である特徴をもって、生活を送る物語である。イメージとしては人間のシリアス寄りな学園モノに、動物である特徴、例えばオオカミは顎の力が強い、のような要素を上手く落とし込んでいる感じだ。肉食獣ゆえの葛藤、草食獣ゆえの恐怖、種族間の意識が読んでいてとても面白い。「捕食者と被捕食者」であるからこその壁や感情には深く考えさせられるものがあった。この漫画に関しては、面白いと良く耳にしていたので、気になって読んだ。

『おまえうまそうだな』は、もともと絵本作品だ。これを映画化したものを観た。この映画を観ることになったのは、友人たちと昔観た印象に残った映画の鑑賞会をしよう、ということになったからだった。ひとりの友人が紹介したのがこの映画だった。あらすじは、こんな感じだ。草食恐竜に育てられたティラノサウルスが、ある日自分を肉食だと知りショックを受け飛び出し、ひとりで生きていくことになる。そんな彼が傍若無人に暮らしていたところ、ひょんなことから草食恐竜の赤ちゃんを拾ってしまう、というお話だ。
この映画、とても素晴らしかった。何よりラストの巧みさが印象に残った。絵本を読んでいると、特にその最後の終わり方が活きてくると思う。また、色の綺麗さも印象に残った。水の描写、海中の描写は夢を見ているように美しかった。

『あらしのよるに』もまた絵本が映画化された作品である。これは別の友人が紹介した。あらすじは、嵐の夜、避難した小屋で出会ったヤギとオオカミのお話である。小屋の中は暗く、お互いが同じ種族だと思い話していたが、あるときお互いの正体を知る。しかし、関係が解消することはなく、友情を育んでいく。ただ、どちらも種族の群れで生活しており、というようなお話だ。ここで描かれていた種族そのものの性質、コミュニティでの立場、それを越えてどう友情を守るか、という描写には心にくるものがあった。二転三転する展開、背景の素晴らしさは特に印象に残った。

三つの作品を挙げたが、前述したとおり、不思議なことに、私はこの作品たちを同時期に鑑賞することになったのだ。『BEASTARS 』では、肉食獣と草食獣が共生し種族を越えて関係性を構築している様子を描きつつも、その種だからこその葛藤や本能が事件を起こしている。『おまえうまそうだな』では、草食から忌み嫌われていた肉食でも、一緒に過ごした日々、関係性が作られていたことによって、ある種異質な存在として主人公が描かれている。しかし、作品の結末を想像すると、きっと『あらしのよるに』とは異なる形なんだろうな、と想像している。その『あらしのよるに』では、コミュニティにいるなかで、異種族と交流を持ってしまった異端、という描かれ方をしていると思う。コミュニティに所属しているがゆえに、その奇妙な縁を優先させることは、すなわち離脱に行き着く、とでも言うのだろうか。

示し合わせたわけでもなく、この作品たちを提示した友人たちが面白かった。「捕食者と被捕食者の関係性」を描く上で心にくるのは、やはり個々がどうやってその関係性を守り抜くか、というところだと思う。この作品たちのおかげで多角的な視点を手に入れられた気がする。

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