『そして生活はつづく』(著 星野源、マガジンハウス、2009年)を読んだ。源さん初のエッセイである。
読みながら思ったことは、時系列で手に取れば良かったということだ。先に『蘇える変態』と『いのちの車窓から』を読んでいたのである。当たり前のことながら、改めてそう思った。彼の変化を時間で追うのはとても楽しそうだ。
『そして生活は続く』は、まだ洗練されてない星野源という感じだった。多分今よりもまだザラザラゴツゴツで、自分の生きる地続きのどこかにいる一人、みたいな親近感を抱いた。くだらない話から真面目な話からくだらない話まで、彼独特のペースで語られていて、相変わらず面白かった。幼少の頃の話、ご両親の話など、彼の根幹が垣間見えるような話も多く、この人はこうして形成されていったのか、と一部分受け取ることが出来たと思う。全てを括って語るのもどうかとは思うが、確かに源さんは一人っ子ぽさがある、とエッセイを読んでいて思った。
本文で印象に残った部分を記す。
「過労? ……ああ。あんた、生活嫌いだからね」
(『そして生活は続く』、星野源、マガジンハウス、2009年、p.27 )
母、ようこちゃんの発言である。この息子の性質を表現する言葉が鮮烈だった。本のタイトルが『そして生活は続く』というところもニクい。この本には度々ようこちゃんが登場するが、その様子は大変ユニークで素敵だ。
確かに流行りものには興味があまりわかないし、自分が作るものも流行とは無縁なものばかりだ。
(『そして生活は続く』、星野源、マガジンハウス、2009年、p.111 )
こんなことを言っていたときから数年経ち、今や流行を作っている位置にいると言っても過言ではないと思う。人間って面白いなあと震えた。まあ一番声出して笑ってしまったのは、「うんこナイキの謎」のくだりだったんだけど。
しかし、この頃と今を対比すると何とも言えない気持ちになる。単純にいえば、すげえな、だ。変わったのか、変わってないのかはよく分からないが、今の星野源はあるべくしてあるんだ、と心底思った。彼の歩んで来た道と今を、とてもすごいな、と素直に思う。
【今日の曲】
星野源「恋」『POP VIRUS』(2018年)
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