上空1万メートルでコンタクトを紛失した話

前回、ライブと視力の話を書いた。その流れで、あの最悪の事件を思い出したのだ。上空1万メートルでハードコンタクトを紛失したあの事件を。
その日、私は初めて飛行機へ乗ったのだ。そして初めて海外へ行くのであった。期待よりは不安感の方がずっと大きかった。
そんな気持ちのまま、搭乗口をくぐり機内へ入った。ここから飛行機に10時間近く乗るのだ。

空の旅に慣れた頃、ふと目に手が当たってしまった。すると驚いたことに、片目だけ視界がぼやけている。ぶわっと汗が噴きだした。こんなときにコンタクトがどこか行ってしまった。私は絶望した。旅の序盤も序盤、ここから先、何時間も飛行機を乗り継ぎ、異国の地に向かう計一週間の旅なのだ。片目の視力が激烈に低下した状態で観光するなんて不可能だと思った。眼鏡の人にわかりやすくこの状態を説明すると、眼鏡の片方のレンズが落ちて割れてしまったような気持ちだ。
予備のソフトコンタクトを持ってきていたものの、2日分くらいしかない。
私は必死にコンタクトを探した。椅子の下、鞄、服のうえ、すべてをひっくり返すように探したが見つからない。コンタクトがどこかへいってしまったとき、たまに瞼の裏や、目尻の奥、涙袋の裏に入っていることがあることを思い出す。急いでトイレに駆け込み目のなかを探しまくった。様々な角度から眼球を検証した。しかし、ない。どこかの裏に入った場合、違和感があるはずなのだが、それも感じず、やっぱり落としたのか、と思った。
CAさんに落とし物をした旨を伝え、探すのを手伝ったりしてもらったが、やはり見つからなかった。どうしよう、どうしよう、と泣きそうな気持ちだった。
もう一度トイレに行き、目を引っ張り鏡を見てみる。なんとなく、上のそのまた上の方に段差のある膜が見える気がする。その膜の端を指で捉え、あんまり押しすぎないように引きずり出した。おおお、あった!!!
こうして一件落着したのである。あんな瞼の奥の方まで行ってしまっているとは思わなかった。コンタクトをなくし、落ちる音など聞こえず、落ちた感覚もなかったときは、じっくり目を調べてみると良い。
目の奥にいってしまったが、自力で取れないときはすぐに眼科だ。

ライブ前やライブ中にコンタクトを落としたこともあった。ふいに手が目に当たると本当に落ちやすい。
日比谷野外音楽堂では、開演10分前に落とし、めちゃめちゃ焦ったが、鞄の上に落ちていたのを見つけ事なきを得た。強い風が吹いていなくて本当に良かったと思う。
マリンメッセ福岡では、曲の演奏中、涙を拭こうとしたら、手の当たり所が悪く、ぽろっと落ちてしまった。もうめちゃめちゃ焦った。スマホのライトで床を照らしなんとか見つけ出した。奇跡だと思った。このとき、スタンディンブロックの後方でスペースが広い場所で聴いていて本当に良かったと思う。拾ったコンタクトは、目薬で洗い流しまくってその場ではめた。まだライブの中盤だったのだ。その後特に問題が起きなかったので、本当に良かった。

こういうハプニングがあるたび、裸眼が良い、と思うのであった。

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