まるで春みたいな陽気の日、雲がぷかぷか平和に流れている日、夏なのに涼しい風が吹く日、青色がどこまでも突き抜けて見えるような日、そんな日は旅に出たくなる。もうこんな生活おらぁイヤだあとなったとき、漠然とした不安に囚われたとき、虚無が心を掴んだとき、全部から逃げ出すように旅に出たくなる。
見たこともない街を歩きたい。真っ白に光る町を見たい。人々の生活が息づく街を見たい。
届かぬ旅路
私の休みはライブのために存在する。ゆえに突発的に休暇にしてどこかへ行くとか、降りる駅を通り過ぎてこのままどこかへ行ってしまおうとか、このままドライブに行ってしまおうとか、無計画に出掛けることがないのだ。お金がとか時間がとか、あれ済ませてないしななど後始末のことが過ってしまうのだ。冷静な自分がどこかにいて、すべてを放り出そうとする私を毎回諫める。
だいたい、旅に出たくなる日、というのはそこに拘束されている状況が多い。それか、旅番組を観たり旅の本を読んでいるときだ。だからこそ、どこへでも行ける連休中の今、それほど旅に出たいという欲求がない。なんと不都合なことか。人は手の届かないものを求めてしまう。
土地の制約から自由になる
旅行したい欲求をおさめる方法のひとつに、卓上旅行(あるいは机上旅行)がある。私の認識でいう卓上旅行とは、机の前であれこれ旅行を想像することである。それは旅先のパンフレットを見るもよし、時刻表を見るもよしである。
しかし、現代においては、最強の卓上旅行ツールがあるのだ。これがあれば世界中の色んな景色を見ることが出来る。
そんな夢のような道具とは何か。
文明の利器
グーグルのストリートビューである。見方は簡単だ。2019年5月現在のやり方を書いておく。マップを開き、右下の黄色い人形をドラッグし、水色の線のうえに落とすだけだ。そうすると画面に道が広がる。道の奥をクリックすると進むことが出来る。詳しい操作方法は公式を見て欲しい。
ストリートビューで色んな場所を探検していると、本当にそこを歩いているような気分になる。山奥から歩き続けて、目前に海辺の街がひらけた瞬間。踏みしめたことのない外国の街を見ているとき。このバーチャル体験は不思議で新鮮な感覚を私にもたらした。観光地を行くのもいいが、何の変哲もないと思っていた街をゆくのもいい。
卓上旅行ほど現実逃避にぴったりなものもない。この過去の地図をめくる虚構の旅行は、想像力と結びつくがゆえにどこまでも自由なのである。
さて、今日はどこへ行こうか。
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