私にとっての三大ファンタジー小説とは、『精霊の守り人』を初めとする守り人シリーズ、『魔性の子』・『月の影 影の海』をはじめとする十二国記シリーズ、『バーティミアス サマルカンドの秘宝』をはじめとするバーティミアスシリーズである。あまりに面白すぎて何度も読んだし、記憶を消してもう一度読みたい本でもあるのだ。あのワクワクが止まらない、ページをめくる手が止まらない、先が気になってしょうがない、そんな焦燥にも駆られるような気持ちをもう一度味わいたいと、かなりの頻度で思っている。
この3冊についてひとつひとつ簡単に紹介してみよう。
『精霊の守り人』(上橋菜穂子、1996年、偕成社)
通称「守り人シリーズ」とよばれている一連の作品たちの一番目がこの『精霊の守り人』だ。ちなみに同一の世界観で別の人間が主人公となっている「旅人シリーズ」もある。どちらも同時に刊行順で読んでいくと、どんどん世界が広がって最高に楽しいのである。ドラマ化や漫画化もされた。
内容はというと、舞台はヨーロッパっぽいファンタジーよりはアジアンな感じだ。そして主人公は超強い30歳の女用心棒である。人と人、異世界と人、歴史の流れ、色んな世界を垣間見ることのできる物語だ。個人的に一番好きな巻は『闇の守り人』である。
余談だが、『虚空の旅人』を読んでいたときアジカンの「マイクロフォン」と「ライジングサン」を狂ったようにリピートで流していたため、この作品を読むと自動的にこの2曲が流れるし、曲を聴くとこの作品を思い出すようになってしまったのだった。この1作は海っぽい曲が似合う作品なのである。
時間を忘れて没頭してしまう、最高の物語だ。
『月の影 影の海』(小野不由美、1991年、講談社、新潮社)
通称「十二国記シリーズ」。刊行の順番は『魔性の子』が先だが、シリーズを読みはじめるとしたら『月の影 影の海』からがおすすめだ。(ここには個人差、諸説ある)
もう、時間を忘れて夢中になって読める作品である。重くてしんどい部分がある一方、本当に読む手が止まらない。超面白い。
個人的に思ったことを書くと、主人公がたいした努力もなくヨイショヨイショみたいな、ご都合主義的な物語はあまり好きではないのだが、この作品は違う。主人公は襲い来る数々の困難にボロボロになりながらもすすんでいく、そして。
展開にも全体的に好感が持てるのである。作者のある種の冷徹さ、自分が生んだキャラを甘やかすことはしない、物語を紡ぐ姿勢を感じた。この物語のことを思い出すと、記憶を消してもう一度読みたい、とよく考えてしまうのである。
もうすぐ新刊が出るので、お祭り騒ぎだ。
『バーティミアス サマルカンドの秘宝』(ジョナサン・ストラウド 著、 金原 瑞人 訳、松山 美保 訳、理論社)
いわゆるバーティミアスシリーズである。本編的な書籍は三部作だ。『ハリー・ポッター』などに夢中になった人にもおすすめな、ヨーロッパを舞台にしたファンタジーだ。ただ、今までの物語と少し違うのは、舞台がけっこう近現代っぽいというところだろう。主人公の成長、と書くとありきたりな感じになってしまうが、この主人公けっこう嫌な奴だったり、その相棒との殺伐とした雰囲気もまた面白いのである。そして関係性の変化、物語の締め方も大好き、というか心に残る作品だ。
秋の夜長に読んでみてはいかがだろうか。きっと素晴らしい時間になること、間違いなしである。ただ、寝る前に読みはじめると、夜更かししてしまうことだろう。
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