漫画を読むのが好きだ。私にとって手に取るハードルが一番低いと感じる物語との触れあいは、漫画だと思う。小説は読む前に、少しだけ、よし読むか!という気持ちがこもる。映像が一番ハードルが高いかもしれない。時間の拘束性が高い気がするからだろうか。映画などを再生し始めたら一気に観たい。そうすると、テレビの前に数時間いなければならなくなる。本は開けばすぐその世界に行けるし、持ち運びもしやすいから場所を選ばない。確かに一気に読みたい気持ちもあるが、集中力がちょうど良い意味で途切れて休憩を入れたり出来るので、自由度が高い気がするのだ。ただ、小説は自らの想像力の翼を最大限に羽ばたかせる。だからこそ、絵と文章で構成された漫画は、一番気軽に読めるのだろう。
『よつばと!』という漫画がある。あずまきよひこ作、出版はメディアワークスだ。このお話は、よつば、という名前の小さな女の子が色んな人々と日々を過ごす物語だ。「日常」がこんなワクワクするものだったのか、と気づかされた、そんなお話なのだ。作家の森見さんも、読んでいる様子が本人のブログから窺える。根強いファンが多い作品だと思う。
『よつばと!』を毎回読むたびに、「最高だな・・・・・・」と本を閉じる。なかでも、私の好きな話は、よつばがお隣さんの高校生、風香の通う学校へ1人で勝手に行ってしまう回だ。あの冒険感にどれだけワクワクしたことか。たしかに、小学校に行く前の幼い子供にとって高校は、全く未知の建物だよなあ、と思う。もちろん、よつばは活発な子供なので、物怖じしない。『よつばと!』を読んでいると、どこか身に覚えのあるような、体験や感情がくすぐられる。自分が過ごした無邪気な日々に思いを馳せてしまう。
よつばの周りの大人たちも良い味のあるキャラばかりだ。よつばが子供だからといって、ただ単に甘やかすだけではない大人たち、だからこそ、よつばを連れて本気で一緒に色んな体験をする。よつばより少しお姉さんな小学生たち。あの子供と小さな子供の関係性を見ると、ああ、こんなときがあったあった、という気持ちになる。よつばの住む街は私たちの生きる世界のどこかにあって、他の登場人物もそれぞれの日々を過ごしているのかもしれない、そんな親しみを感じるのだ。
『よつばと!』の面白いところは、まだまだある。よつばの放つ、子供がゆえの根源的な問にハッとさせられる瞬間、そしてそれを聞いた大人たちの表情が面白おかしい。また、巻数が増えるにつれて、ほんとに何気なく
回収される伏線の鮮やかさも印象的だ。 重大なことではないように日常の一コマとして描写されるバランス感覚がすごい。
また、背景の描写が素晴らしい。緻密に描き込まれた背景を眺めるだけでも楽しいのだ。
こんな面白い漫画に出会えて良かったなあと本当に思う。子供も大人もよつばの目線で世界を垣間見ることが出来る。それと同時に、大人は見守るような視線で豊かな世界を見渡せる。
日々を過ごすことが楽しくなる、そんな漫画なのだ。
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