本の感想は、中盤からだ。そこだけ確認したい方は今からすぐの段落は飛ばして貰って大丈夫だ。
この記事は本との出会いからはじまる。
その日、私は品川駅のエキュートにいた。STAND ALONEというライブが終わったあと、時間があったので、立ち寄ったのだ。STAND ALONEは、フジの総くんと藤巻くんが弾き語りで演奏するというスペシャルなライブだった。ふたりで作った「まるくおさまって笑顔」という曲が微笑ましくてとても良かった。そんな素晴らしい夜の余韻に浸りながら、私はお店をうろついていたのである。
おお、書店があるではないか。帰りの電車で読む本でも探そう、と思い入店する。とても好みの本屋さんだった。目立つところに置いてある漫画の表紙が、よくあるような新刊ばかりではなく、これぞ、というもので嬉しくなったのだ。応援の気持ちも込めて、ここで本を買いたい、と思った。同時に私は、旅先で本を買い読みながら帰る、という行為自体にもワクワクしていた。
そして手に取った本が『ロボット・イン・ザ・ガーデン』だったのだ。
まず何に惹かれたか、といえば本の表紙である。とても、とても素敵なイラストなのだ。草花のなかに佇むぼろぼろの可愛らしいロボット。好奇心が揺すぶられた。
ひっくり返すとうしろにはあらすじが書いてある。内容も面白そうだ。文庫本だし、持ち帰るのにもちょうど良いと思い、いそいそと購入した。そして電車に揺られながらページをめくりはじめる。
それはロボットと男性が旅する物語だった。話の始まりにワクワクし、主人公の状況が羨ましくもあり(本人はダメダメではあるけれど)、そして、彼らの旅に惹かれた。
自分も旅をしていながら、旅の本を読む、その面白さに気づいてしまった。
小説は没頭させる力がとても強いと思う。ホテルで宿泊し朝起きたとき、あれここどこだっけ、と戸惑うように、電車で読んでいてふと、ここはどこだっけ、という気持ちになったのが面白かった。私は高速の箱に運ばれながら、心は遠くの都市を旅していたのだ。
物語に出てくる登場人物も、話の流れも、どこか今まで読んだことのある物語とは違うというのが良かった。既視感を覚える話、というのはやはり結構存在する。そのどれともズレている感じは、特に読み応えがあった。
読み終わったあと、ああ、良い本と出会えたな、と息をついた。なんとなく手にとった本が素晴らしい物語だったときの喜びはとても大きい。素敵な本屋さんで出会ったこと、旅をしながら読んだこと、自分の時間と物語が交差したような気がしたこと、思い出は一段と深くなった。
遠征ひとり旅、お供はやはり本に限る。
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