前回、
という記事を書いた。インタビュアーとの対談形式で、中村一義が半生を振り返るという内容の本だった。生い立ちから、音楽をはじめたきっかけ、そして100sの『世界のフラワーロード』までが本人の口から語られた1冊だ。
今回は、『中村語録』『中村語録Ⅱ』『中村語録Ⅲ』の3冊を読んだ感想を書こうと思う。ちなみに、読む順番は個人的に『魂の本 ~中村全録~』から読み、『中村語録』にいくのがおすすめだ。どんな人物と語らうのかがよく分かってスムーズに認識できる。
『中村語録』の概要と感想
『中村語録』シリーズは、それぞれ中村一義とその家族が対談した本となっている。
1番目となる『中村語録』(2002年)では、かっさんに大きな影響を与えた祖父との対談が中心となって構成されている。本文の「はじめに」では
デビュー前から僕は毎晩のようにお茶の間でおじいちゃんと話をしていて、社会的なことや哲学的なこと全てを教わったんです。それが僕の歌詞になっています。
『中村語録』中村二郎・中村安子・中村一義、2002年、博愛堂、p.5
と書かれているほど、ある種、中村一義の本質を覗ける文章になっているのではないだろうか。ああいう時代でも、こういう人物がいたのか、というのが印象的な1冊だった。中村家のバックボーンを垣間見る本だ。
『中村語録Ⅱ』(2010年)は、かっさんと祖父を見守り支えた祖母との対談となっている。生活に根付いたような会話が面白おかしくて、あるいは生涯の悲喜交々に感情が揺り動かされる内容だった。個人的にはⅡが一番読みやすかった気がする。かっさんと安子さんのやりとりに笑みが漏れる。
完結編である『中村語録Ⅲ』(2011年)では、かっさんが結婚したパートナー中村早苗さんとの対談となっている。これまた内容が濃く、色んな視点で語られるそれぞれの人物は、自分の中でどんどん立体的になっていった。一緒に暮らす動物たちの話も胸に迫る。
また、曲が生まれる瞬間について語られる場面がとても印象的だった。ファミレスで思いつくくだりなど、かっさんのそばにいる早苗さんだからこそ語ることのできる話だなと思って面白かったのである。
そうか、こういう出来事や人々のひとつひとつが中村一義の音楽を作る要素になっているんだな、ということが分かった。
『中村語録』シリーズは、"中村一義 コンセプトサイト KIKA:GAKU"というサイトのショップで、全て購入することができる。『中村語録』のみ新装版となり追加収録が行われている。
『魂の本 ~中村全録~』と『中村語録』の違い
『中村語録』のほうが、より中村一義との距離が近い。『魂の本 ~中村全録~』では淡々とした語りが印象的だったが、心を許す家族との対談ということもあってか、茶の間で話を聞いているような気持ちになった。読後は、中村家の家族の一員になったような錯覚を感じる。ファミリーヒストリーとかを観ててそんな感じになったことはないだろうか。ないか。
なにはともあれ、色んな人間の人生を一気に浴びた感覚である。特に『中村語録Ⅱ』を読んでいたときは、胸を締め付けられて涙がでてきた。
色々知った後に聴くかっさんの楽曲がこれまた心にしみこんでくるな、と思う夜だった。
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