言語化された空気感『アイリッシュ・ミュージック・セッション・ガイド』

今回紹介する本は『アイリッシュ・ミュージック・セッション・ガイド』(著:バリー・フォイ、絵:ロブ・アダムズ、訳:おおしまゆたか、2017年、アルテスパブリッシング)だ。

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どんな本か

この本は、アイリッシュ・ミュージックのセッションについて、言葉で説明されている珍しい本である。著者自身、色んな楽器を弾くことができ、実際にセッションを行っているため、内容は経験に即したものだった。

そもそもセッションとは?

そもそもセッションについてだが、伝統音楽然り「【閑話回】“楽譜”のない音楽とフィドル」に書いたとおり、本来演奏できるようになる流れは、弾ける人間からの口伝なのだ。弾ける相手から実際の雰囲気、演奏法、どうやって曲を繋いでいくかを直に学んでいくのである。
しかし、周りにそういう文化がない場合、その音楽をやりたいと思っても、習得が難しい。ましてや、人が集まって行われるセッションの雰囲気なんて知りようがないのだ。
そんな情報が乏しい中、『アイリッシュ・ミュージック・セッション・ガイド』を読めば、本場のセッションの仕組みや感覚に触れることができる貴重な情報源なのである。

本の雰囲気と内容

本自体は文量がそこまで多くなく、挿し絵も入っているので読みやすい。大きさもB6版というお手軽サイズで、ぱらぱらと読むことができる。
内容は、はじめはセッションについての疑問に答えるような形ですすみ、巻末には、“ジグ”や“イリン・パイプ”など、アイリッシュ・ミュージックに関係のある用語が説明されている。語り口調も軽快で堅苦しくないので、とっつきやすいと思う。
一方、書いてある要素は、読んでいると実践するには難易度高いなあと感じてしまう部分があった。ただ、本場の認識や様式を知るにはぴったりだと思う。

セッションに使われる各楽器に対する印象、その楽器はセッション内で何人までいていいのか、曲の繋ぎ方、セッションの場にいるときの振る舞いなど、実践的なことを知ることの出来る1冊となっている。

フィドルの演奏練習には直接関係なくても、その楽器のバックグラウンドを知るのは楽しいことなのだ。

バリー・フォイ (著), ロブ・アダムズ (イラスト), おおしまゆたか (翻訳)

その他書籍紹介

書籍
本についての記事一覧です。面白かった活字や小説、漫画について書いています。

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