前回「くるりを知る楽しさ『くるりのこと』という本」という記事を書いた。この本はくるりの歴史を知るのにぴったりの書籍である。
そして今回は『くるり詩集』(2010年、岩崎書店)について綴ろうと思う。
「『志村正彦全詩集』2011年版、新装版(2019年)の違いと概要」にも、ちらりと登場した『くるり詩集』。どんな本かと言えば、くるりの歌詞が載っている本である。ただ歌詞がまとめられているだけではない。「はじめに」に綴られた岸田くんの文章から、もうグッときてしまうのである。また、一部分の曲は、岸田くんの直筆で載っている。その横に歌詞の解説も書かれているのだ。
手書きの字からは色んなものが伝わってくる。お手本のようにピッチリ綺麗というわけではないけど、さらさらと伝わる流暢な字。間違えた部分をくしゃくしゃと塗りつぶした訂正の跡、語られるその歌の違う面。手書き部分の下地は色に染められていて、それぞれの歌によく似合っている。特に「ワールズエンド・スーパーノヴァ」「ロックンロール」はぴったりで、他の曲も思い浮かべるならこの色、が配置されており、それぞれの曲に対する愛情を感じた。
やはり詩集は良い。ぱらぱらとめくって歌詞に思いを馳せるのもいい。どういう言葉が使われているか探してみるのも面白い。作詞者によって、頻出の言葉や、その人らしい文言というのがあるのが分かってくる。もちろん音楽を流しながら、ただただ歌詞を追うのも最高である。そのたびに発見があったりする。
『くるり詩集』では、いくつかの曲がピックアップされて掲載されているのだが、「魂のゆくえ」が載っているのがとっても嬉しかった。心底大好きな曲だからだ。個人的に、曲を好きになるのはメロディが好きだから、ということが多いのだが、「魂のゆくえ」は歌詞も特に好きな一曲なのだ。だから、こうやって歌詞カードではない媒体で見るのも嬉しさがある。
こうやって書いたように、色んな媒体を通し好きなものの違った面を見てみるのもいいものだ。そのうえ、詩集を読んでいると、歌詞が近くなって、他の曲もより好きになったりする。好きなものが多いほうが、生きるのも愉快だろう。
詩集を読んでいて思ったが、くるりは歌詞の振り幅が大きいけど、根底に流れているものは繋がっている、と感じた。そりゃほとんどの曲を同一人物が書いているんだから、と言ってしまえばそれまでだが、それを体感できたということに意味がある。
くるりを聴いていたら、どうもライブに行きたくなってしまった。
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