『くるりのこと』 (2016年、文庫版2019年、 新潮社 ) という本をご存じだろうか。もともと単行本として出版された書籍だったのだが、最近、追加のインタビューが加えられて文庫本化されたのだ。
内容は、まさに“くるり"のこと、だ。メンバーの幼少期の話から、文庫本版では最近のアルバム『ソングライン』までの道のりが、主にオリジナルメンバー2人に対するインタビューという形で順を追って語られている。
そもそも、私がこの本を読む前に持っていたくるりのイメージは、京都のバンド、音楽的に独特で一線を画す、岸田くんはクラシックにも造詣が深い、鉄道に詳しい、佐藤さんは社長、新録『ソルファ』のレビューをしていた(「夏に聴きたいASIAN KUNG-FU GENERATION」)、笑顔が素敵程度のものだった。だからこそ、バンドヒストリーを追って知った今、なんだか面白くって仕方ない気持ちを抱いているのだ。そしてくるりの音楽を順を追って聴き返したい衝動に駆られている。
今まで書籍で色々なバンドヒストリーを読んできた。アジカン、フジ、清志郎さん、雑誌のインタビューではBUMPもだ。皆それぞれが紆余曲折を経て今がある、順風満帆で真っ直ぐな道のりしか歩んでいないバンドなんていなかった。くるりもまた然りだったのだ。
くるりは入れ替わりの激しいバンドという印象があった。本書を読むことで、バンドの変化、変わらない部分を明確に知ることが出来たのも良かったなと思う。それに加え、色んなことが正直すぎる言葉で語られていたのも印象的だった。普通だったらオブラートに包みそうなこともかなりストレートに話をしていて、ああ、彼ららしい、と思った。その率直さが、自分がもともと持っていたくるりへのイメージとどんどん合致していって、立体的な感触になっていったのだ。
また、バンドヒストリーの面白いところは、そのバンドそのものだけでなく、他のミュージシャンも登場してくる点も見所だ。この『くるりのこと』でも様々な人が登場して、ここでこんな繋がりがあったんだ! と興奮したのは言うまでもない。ファンファンがどうやって加入していったのかも印象的で、色んな方向から語られる、くるりというバンドの話にワクワクした。
なんで書籍を読みたくなるかといったら、多分、私は私が大好きだ、最高だ、と思った音楽、作品たちがどうやって生まれたのかを知りたいからなのである。『くるりのこと』でもその片鱗に触れられた気がして、自分も一緒に歴史を歩んだ気持ちになって、とても楽しい気分になった。今日もまた、特別な日常をくるりと過ごしてみようと思う。
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