前回、短い名曲についてBUMP、アジカン、フジファブリック編を書いた。今回はスピッツ、くるり編である。
1996年『インディゴ地平線』スピッツ
「花泥棒」(1:50)
曲名にふさわしい曲、花泥棒という言葉を音楽にしたらまさにこんな感じ、という1曲だ。アルバム1番目にこの曲がくるのもニクい。終わったと思ったら終わっていない、これを1分50秒でやるのヤバいなと思った。可愛らしくて儚くて愉快な楽曲だ。
そもそもスピッツ、キャリアが長いというのもあるだろうが、3分以内の名曲が沢山ある。『名前をつけてやる』の「日曜日」(2:36)、『フェイクファー』「仲良し」(2:41)、『色色衣』「メモリーズ」(2:59)などなど。
このなかで『ハヤブサ』の「宇宙虫」(2:37)は異彩を放つ。RPGゲームの序盤、冒険者が行く初心者の森か、水辺のマップみたいなBGMの雰囲気があるなあと思った。聴いていて心地よい不思議な曲だ。
「スピッツの夢にいる『醒めない』」で書いたように、このアルバム収録「こんにちは」もまたしかりである。
この曲がこの分数に詰まっているの? と内容の濃さにビックリする曲が多い。
あの、時を詰め込んだみたいな名曲「1987→」ですら3分以内だ。恐るべし、スピッツ。
2012年『坩堝の電圧』くるり
「dancing shoes」(2:33)
くるりのイメージを良い意味でぶち壊してくれた1曲。一言で表わすなら"格好いい"。 バレリーナを題材にするとしたら、安易な考えでいけば、優雅や上品、可愛らしい感じとかになるんじゃないかと思う。ちょっといって情熱的とか。そんな考えを軽々超えて激しい楽曲になっている。これは戦いの歌だ。ひとつの大きな物語がこの分数にまとめられているのに舌を巻く。岸田くんのがなるような歌声も印象的で大好きな曲だ。
くるりもまた、短い名曲が多い印象がある。その辺意図的にやっていそうなイメージもなんとなく持っている。
なかでも、独特さ爆発枠「TEAM ROCK」「トレイン・ロック・フェスティバル」「お祭りわっしょい」「chili pepper japonês」「日本海」みたいな曲が短いのも面白い。
また『ジョゼと虎と魚たち』の「乳母車」みたいな牧歌的なインスト曲も素敵だ。
正統派でいくと『NIKKI』の「冬の亡霊」「虹色の天使」なんかもいい。「冬の亡霊」は曲調が穏やかでリズム感が独特なところがクセになる。一方「虹色の天使」はロック感があって、夏フェスとかに映えそうだ。くるりのイメージが「東京」や「ばらの花」だけの人にはぜひ聴いてみてほしい。
さて、私のなかでくるり短い曲選手権優勝は、言わずもがな、「THANK YOU MY GIRL」(2:05)である。この曲については「特別な日常 くるり」などで、散々書いてきたのでそちらを参照して欲しい。また「くるり『ソングライン』と歩きたい道」で書いたように「だいじなこと」も短い名曲なのである。
書いていて思ったが、短い曲ながら、これを永遠に聴いていたいと思わせる魅力があるのだ。なんというか、短い曲は一方で、ある種とても贅沢だな、とも思った。
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